早期英語教育の意外な落とし穴「セミリンガル」

「子どもが赤ちゃんのときから英語のCDを聴かせたほうが良いのでしょうか。
英語脳を作ってあげたいと思うのですが」

ご質問をいただきました。

そうですよね。「我が子のためには親としてできる限りのことをしたい」
そのお気持ちよくわかります。

YouTube[Mimi Pepper TV]
久々の「教えて!Rosyちゃんシリーズ」にてお答えしていますが、

こちらのブログでも要点をまとめておきますね。
なにかの参考になれば幸いです(^^)

一般的に赤ちゃんのときから英語教育を始めたほうがよいとされる理由

まずは「臨界期仮説」

見ての通り あくまでも「仮説」ですが、「臨界期仮説 (Critical Period Hypothesis)」 によると「言語をスムーズに習得できるのは、一定の年齢(臨界期)まで」とされており、多くの場合 臨界期の終わりは子どもが思春期に達する前後の12〜15歳と考えられています。

臨界期仮説では「何歳までが限界」という明確な結論はありませんが、一貫して見られるのは「学習開始が早ければ習得がスムーズである」という見解です。

また、日本語と英語の音は周波数帯が異なるため、英語の音に耳を慣らすためにも早くから英語を聴かせたほうが良いということもよく言われます。それなら、赤ちゃんに英語のCDを聴かせるのは正解なのでしょうか。

英語を英語のままインプットしてアウトプットする英語脳の育成には「自分が発音できる」ということが重要な要素となるようで、その点から考えると「聴くだけ」の状態から英語脳を育てるというのは無理があるのかもしれません。

耳にした瞬間に「これは英語だ」と感じられるようになるためには、きれいな英語の発音を聴く練習をするだけではなく、自分が正しい発音をしてそれを脳に覚えさせるというプロセスが必要であるとされています。
英語脳育成のためには、スピーキングの練習がいかに大切かということがよくわかりますね。

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う〜ん、ところがどっこい・・・・・・。
「英語脳」という言葉を初めに提唱した浜松医科大学の植村研一教授について調べてみると、実際のところはどうなのか迷宮入り!1999年にはNHKの番組にも出演して、データをもとに持論を展開しておられたようなのですが、今ではその論文も取り下げられて?どこにも見つからないのだとか・・・・・・。なんちゅうこっちゃ〜〜!

脳の機能や言語習得の仕組みについては、まだまだ未知の部分が多いということはわかりました。一方で、「セミリンガル」のメカニズムについては研究がすすんでいるようです。

意外と知られていない「バイリンガル教育の落とし穴」について、詳しく見ていきましょう。

「言語習得」の落とし穴

科学的視点から見たバイリンガルの利点として、「クリエイティブ思考に脳の容量をうまく割くことができる」「ワーキングメモリの柔軟性が高い」の2点があげられますが、
(詳しくは「避けるべきは「セミリンガル」。間違いだらけの語学教育」参照)

これらのメリットを享受するためには、どちらか一つの言語で年齢相応のCALP(Cognitive Academic LanguageProficiency)を身につけていることが条件となります。CALPとは、認知学習言語能力、簡単にいうと年齢相応の国語力のこと。

世界的に見ても、二つの言語ともに年齢相応のレベルで話せて、読めて、書けるという子どもは数%未満。そこを目指すよりも、自分の子どもに年齢相応の国語力をつけてあげることのほうが大事だという考え方もあります。

立命館大学大学院 言語教育情報研究科 教授 田浦 秀幸氏曰く、「母語だけでも年齢相応のCALP(認知学習言語能力)を身につけさせてあげることが親の責務」
私も実体験として多くのセミリンガルを見てきたので、自分の子どもたちにはまずは国語力を身につけてほしいと願っています(願っているだけで、なにか特別なことをしているわけではないのだけど!トホホ)。

《子どもが言語を習得するまでの流れ》

「赤ちゃんの聴覚は、妊娠6カ月頃から発達し始め、お腹の外の音や話し声を聞けるようになります。生後1歳くらいで意味のある単語を話し始め、2歳になると操れる単語数が爆発的に増え、5歳までには母語の基礎ができあがります。
6~7歳の頃には、聞いた言葉を文字と結びつける「マッピング」が徐々に起こり、10歳頃になると母語を使って抽象的な思考ができるようになります。そこから先は、敬語や難しい語彙、表現などを習得しながら、CALP(認知能力)を育てていくことになります。」
「避けるべきは「セミリンガル」。間違いだらけの語学教育」より

CALPと対になるのが、BICS(Basic Interpersonal CommunicativeSkills)といわれる日常的な会話(言語)能力。

臨界期の議論でも「スムーズな言語習得」という言葉が出てきますが、「言語習得」とは具体的にはどのような状態を指すのでしょうか。CALP(認知学習言語能力)?それともBICS(日常的な会話(言語)能力)?

「英語がペラペラ」の意味が、「日常的な会話ができる」ということなのか、「その言語における認知学習言語能力がある」ということなのかによって全く違うということがおわかりいただけると思います。

「日本の子どもがアメリカに行くと、通常BICSは1~2年で習得できます。しかしCALPの習得には6~10年ほどかかるので、認知能力が順調に育っている小学生の段階で教育言語が変わると、新言語(英語圏なら英語)でのBICSを身につけながら、日本語CALPの伸長を継続しないと、どちらの言語でも年齢相応に達していない不幸な状況に陥ります。」
「避けるべきは「セミリンガル」。間違いだらけの語学教育」より

日本語での認知学習言語能力の土台がしっかりとできてさえいれば、それを拠り所として新しい言語における認知学習能力を築くことができる。
何歳になっても、本人の努力次第で英語を話せるようになる人を私は見てきましたし、「英語学習にはたくさんのエクスポージャー(接する)とインタラクション(やりとり)が大事」普段より この点を意識して英語レッスンをしています。

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今回引用した記事では触れられていませんが、言語と心には密接な関係があると個人的に感じています。母語での深い根っこ(CALP)を持たずに大人になってしまうと、心の拠り所がないというか、自分が何者であるかのアイデンティティが持てないままの人が多いように思うのです。

母語(日本語)での豊かな感性を育みながら、英語との接点も楽しむ「赤ちゃんからの英語教育を成功させるための3つのポイント」 次回のブログで書きたいと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました(^^)

米国代替医療協会認定ヘルスコーチ
公認国際ヘルスコーチ
IIN卒ホリスティックヘルスコーチ
英語講師

【Spice up your life with English!】
英語のある人生はオモシロイ!

講師:Mimi Pepper (橋爪 美味)